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渋谷が沸いたタイムアタックイベント『Lenovo All Players Challenge』の裏側

2023.11.25 09:19(12か月前) NEWSSIMlenovo

2023年9月15日〜18日、東京・渋谷のイベントスペース『ZeroBase渋谷』にて2023年F1日本GPのタイトルスポンサーを務めるレノボ(レノボ・ジャパン)が主催するレーシングシミュレーターを使用したタイムアタックイベント『Lenovo All Players Challenge』が開催された。渋谷スクランブル交差点のオーロラビジョンをレノボがジャックするなど、大規模なプロモーションも展開されたこともあり、SIM業界やF1ファン以外からも高い注目を集めた。
 
会場となった『ZeroBase渋谷』には、最新鋭のレーシングシミュレーターが11台設置され、11台全機の開発・製造を手掛けたゼンカイレーシングが『Lenovo All Players Challenge』に携わることとなった。これまでさまざまなイベントに参画、または主催してきたゼンカイレーシングだが、『Lenovo All Players Challenge』のような大規模イベントに携わるのは初の試みだった。創業4年目の企業がいかに『Lenovo All Players Challenge』に携わり、そして何を得たのか。ここに書き記しておきたい。
 

 

■人との出会いとご縁が仕事をつなぐ

 

そもそも、レーシングシミュレーターの開発・製造・販売を手掛けるゼンカイレーシングが『Lenovo All Players Challenge』のイベントサポートに加わったきっかけは、車椅子レーサー長屋宏和氏からの誘いだった。長屋氏はゼンカイレーシングとともに、ハンディキャップがある人でもeスポーツの世界で0.001秒を削る戦いができるよう、バリアフリーなレーシングシミュレーターの開発に取り組んでいる。
 
長屋氏の活動はTBS系列の情報番組でもドキュメンタリーとして大きく取り上げられており、番組を見たレノボの担当者が長屋氏にコンタクトをとったことが最初のきっかけだという。長屋氏の取り組みは、『Smarter technology for all』(すべての人の生活を、テクノロジーでより豊かにする)というレノボの社是に通じ、また「テクノロジーの力で、F1をあらゆる人へ」という『Lenovo All Players Challenge』のイベントコンセプトとも親和性が高かったためだ。
 
長屋氏の誘いがきっかけでゼンカイレーシングはレノボとタッグを組むこととなった。最初のタッグは、7月8日にDAZNの人気F1番組『WEDNESDAY F1 TIME』のコラボイベントとして東京・青山のスパイラルホールで開催された『Lenovo F1® Fan Meeting 2023 トークとeレースによる日本GPに向けた決起集会 Supported by DAZN WEDNESDAY F1 TIME』だった。抽選で100名が参加できるトーク主体のイベントで、シミュレーターを用いたエキシビションマッチが行われ、ゼンカイレーシングはシミュレーターの運用面をサポートした。
 

 

■真剣勝負を支えたイコールコンディションの徹底

 

改めて、『Lenovo All Players Challenge』というイベントについて振り返ろう。メインコンテンツは2023年F1日本GPにおいて最もプレミアムな観戦チケットである『パドッククラブ』への招待をかけたタイムアタックチャレンジだ。この『パドッククラブ』は3日間で78万円(鈴鹿サーキット公式サイトでの価格)もする、F1ファンにとっては喉から手が出るほど手にしたいチケットのひとつだ。紅白歌合戦出演歌手や著名アーティストをはじめとするVIPもこの『パドッククラブ』からF1日本GPを楽しんでいた、と言えばその“格”の高さが伝わるだろうか。
 
その『パドッククラブ』への招待は上位3名まで。それゆえに連日、SIMレースを得意とする“ガチ勢”が真剣勝負に挑むことになった。ゼンカイレーシングは、このパドッククラブの権利を懸けた真剣勝負を支えるべく、目には見えないところでさまざまなチャレンジに取り組んでいた。その中でも特筆しておきたいのは“イコールコンディションの徹底”だった。ゼンカイレーシングは『Lenovo All Players Challenge』に向け、固定型リジッドSIMの『ZR-SX100-Formula』を新たに5台製造した。
 
固定型リジッドということもあり、構成はシンプルだったが、5台はフレーム、ポジションは同寸法。使用デバイスも統一したほか、スペーサーの長さ、ボルト位置、ボルトの締め付けトルクまでもを統一。PCもシミュレーターとしては初の試みであるレノボのゲーミングノート『Legion Proシリーズ』を搭載し、使用ソフトウェアである『F1 23』上でもセッティングに誤差がないように徹底した。
 

 
側から見ればその違いはわからない。ただ、「少しづつ違いは出た」とゼンカイレーシング代表の林寛樹は振り返った。ただ、この違いは、作り手だからこそ感じる違和感のレベルであり、ゼンカイレーシングの開発メンバー以外には感じ取れないレベルだったかもしれない。にも関わらず、現地で時間の許す限りアジャストし、作り手レベルで違和感が出なくなるまで」にイコールコンディションを整え、『Lenovo All Players Challenge』を迎えたという。
 
個々のユーザーのスタイルや要望に応じて、その都度フルカスタマイズのシミュレーターを開発・提供してきたゼンカイレーシングにとって、イコールコンディションのシミュレーターを複数台製造・搬入することは初めての試みだった。徹底に徹底を重ねても、わずかな個体差が出てしまうという課題に徹底的に向き合っただけに、今回のイベントサポートで得られた技術面での知見は今後のシミュレーター開発に大いに役立てられるに違いない。
 

 

■イベント来場者層に合わせたソフトウエアチューニングの大切さ

 

『Lenovo All Players Challenge』は“ガチ勢”でなくともシミュレーター体験ができるコーナーも設置された。基準タイムを上回った参加者に先着で限定グッズをプレゼントする企画も行われ、F1好きの家族連れから、渋谷を観光に訪れた海外からの観光客まで多くの方が体験していた。この体験ブースにはゼンカイレーシングのフラッグシップ機である4.1軸モーションシミュレーター『ZR-SX400-Formula/GT』のGTポジション、フォーミュラポジションの2台が持ち込まれた。
 
「ロール、ピッチ、ヒーブに加え、重力加速度のドライバーへのインプット、その先には恐怖を感じるシミュレーターの再現を目指して開発している本格モデル」であり、端的に言えばレーシングドライバーが自身の鍛錬に使うプロフェッショナルモデルだ。それだけに、激しい挙動を見せることもできる。ただ、『Lenovo All Players Challenge』ではシミュレーターに詳しくない方に体験してもらうことが目的であったため、挙動はソフト方向で設定された。それでもクルマの動き、操作に対するフィードバックをより多くの情報としてキャッチアップするには十分だったようだ。『ZR-SX400-Formula/GT』の詳細やカスタマイズに関するお問い合わせはコンタクトフォームまで。
 
また、体験ブースにはハンディキャップシミュレーター『ZR-HC100-GT』の長屋氏専用モデルが持ち込まれた。これは長屋氏がSIMレースで0.001秒でもタイムを削れるように、1年以上の歳月を通じて開発が続いているモデルだ。車椅子生活となる前は、F1登竜門のレースシリーズ、全日本F3選手権に参戦していた長屋氏だけに、0.001秒を削るためのシミュレーターへの改善要望やこだわりは、凄まじい領域だったという。的確な要望やこだわりはゼンカイレーシングの技術力の進化にも繋がった。
 

 
開発初期、長屋氏専用モデルの入力デバイスは、左手操作でステアリング、右手操作でスロットルとブレーキのみであり、シフト操作の入力がなかった。SIMソフト上でオートマチックミッションに設定すれば走れなくはない。ただ、0.001秒を削る走りを目指すのであれば、はっきり言えば足りない状態だった。そこで、肘でシフトアップ、口でシフトダウンする入力装置を追加。
 
さらに、タイムを削れるようにするべく、入力のファジー(曖昧な)領域を無くし、思い通りの入力ができるよう、ブッシュやスプリングの硬さの調整、そしてレッドゾーン領域の調整までに至った。なお、長屋氏とともに蓄積したノウハウをもとに、ゼンカイレーシングではレーシングシミュレーター『ZR-HC100-GT』の販売を開始しているという。詳細やカスタマイズに関するお問い合わせはコンタクトフォームまで。
 
11台のシミュレーターは4日間のイベント期間中、ノートラブルでイベントを支えた。高負荷のかかるシミュレーターソフトを常時起動させつつも、タイムアタックやSIM体験に支障が出ることがなかったのは、11台のシミュレーターに搭載されていた全てのPCがレノボのLegion(レギオン)だったからだろう。改めて快適なSIM環境構築には、強力なパフォーマンスと安定性を兼ね備えたゲーミングPCが欠かせないと身をもって学ぶ機会となったに違いない。
 

 

■オフラインイベントを通じてさらに繋がる人との“縁”

 

SIMレースの世界では日々オンラインレースが盛んに行われている。そのため、SIMレーサーやSIM業界に携わる人々の交流はオンラインが主軸となるため、名前やアカウント名はお互いに認知していても、実際に顔を合わせるオフラインの機会が非常に少ない。それが当たり前だったからこそ、『Lenovo All Players Challenge』の開催は多くのSIMユーザーにとって、同じ界隈のSIMユーザーたちと「実際に顔を合わせて話ができるチャンス」だった。
 
2022年のSeCRチャレンジクラスに参戦するなど、さまざまなeモータースポーツ大会に参戦する中学生eレーサー黒沢和真選手は、長野県からご家族とともに『Lenovo All Players Challenge』のために渋谷を訪れた。さらには脇坂寿一氏をはじめ、ゼンカイレーシングがサポートする冨林勇佑、木村偉織、菅波冬悟といったリアルレースでも活躍するプロレーサー、SIMレーサーやYouTuber、インフルエンサーとしてSIM業界に深く携わる人々が訪れ、対面で交流する様子が至るところで見られた。改めて、オフラインでのリアルイベントを開催する意義を再確認したと、林は振り返った。確かに、イベントを通じ直接顔を合わせ、言葉を交わした経験が、それからのオンライン上の交流に好影響を与えることは間違いない。
 

 

■「大規模SIMイベントはZENKAIRACINGにお任せください」

 

「今回のイベントでは、ZENKAIRACINGが開発・保有する11台のSIMをレンタル提供しました。タイムアタック機5台、4.1軸モーションSIM2台、長屋氏専用ハンディキャップSIM1台、Lenovo製PCを搭載した固定SIM3台の計11台のラインナップ。いま、国内でこれだけの台数のSIMを提供可能なSIMベンダーはZENKAIRACINGのみです」とゼンカイレーシング代表の林は振り返る。
 
(編集注釈:なお、ZENKAIRACINGが保有する11台のSIMは、AssettocorsaやiRacingといったPCソフトウエアに対応したドライビングの鍛錬・研究に活用されるプロフェッショナルSIMであり、ゲーム機専用に開発されたエンターテイメント用途のものではないことは覚えていただきたいポイントだ!)
 
「ZENKAIRACINGのSIMはF1 2023やWRCシリーズをはじめ、さまざまなPC用レーシングSIMソフトに対応可能です。2024年3月に開催予定されているフォーミュラEや、同年4月に鈴鹿サーキットで史上初の春開催を迎えるF1日本GPなど、大型レースイベントでの需要を見越して、さらにイベント用筐体の台数を増やす予定です。SIMを活用したeスポーツイベントやモータースポーツイベントの企画・運営もZENKAIRACINGにお任せください」

 

■最後に

 

取材の最後、ゼンカイレーシング代表の林は、「ゼンカイレーシングとして、レノボ様という著名なクライアント様と仕事ができたこと、国内大手代理店の方々とともに、モータースポーツの最高峰であるF1に関連するイベントに協力できたことは、大変素晴らしい経験でした」と振り返った。
 
「私たちゼンカイレーシングは2020年に法人化し、創業から4年目というまだ若い会社です。そんな社歴も浅い会社が、レノボ様のような大企業をクライアントに仕事をすることはとても難しいことです。『Lenovo All Players Challenge』は、長屋さんをはじめとするたくさんの方のお力添えもあって実現したことではありますが、ニッチな分野にも関わらず、熱量の高いメンバーがゼンカイレーシングに集まっていたからこそ実現できたのだと思っています」
 
「改めて、『Lenovo All Players Challenge』に来場いただきました全てのお客様。レノボ様、代理店様をはじめとするイベント運営に携わったすべての皆様、本当にありがとうございました。最後に、イベントを支えてくれたゼンカイレーシングの兒島、塩谷、大越、岡田のプロ意識溢れる4名のメンバーに心から感謝を伝えたいと思います」
 
新しい取り組み、業界の垣根を超えた活動など、意欲的にアクションを起こすゼンカイレーシング。今回のレノボとの取り組みをきっかけに、またひとつ、大きな成長を遂げられたが、これらはひとつの通過点に過ぎない。毎週、毎月、何かしら新しい動き、新しい依頼が舞い込むというが、中長期な目線で次なるアクションの優先順位付け、選択と集中の繰り返しをしながら、企業として、またレーシングシミュレーターのプロフェッショナルビルダーとして、更なる成長曲線を描いていくゼンカイレーシングに、ぜひご期待ください。
 
Text:ZENKAIRACING MEDIA TEAM
 

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