レーシングシミュレーター入門者から、eモータースポーツのレースで戦う上級者まで、幅広いニーズに応えるデバイス展開が特徴の『MOZA RACING』。
そのMOZA RACINGから、2024年6月末に登場した新デバイスが『MOZA R3』です。
数多くのグレードを展開するMOZAのモーターベースの中で、最もローコストなエントリーモデル、そしてXbox対応機として発売されたMOZA R3ですが、果たして同価格帯のシミュレーター用モーターベースと比較してどうなのか? 気になっている方も多いかと思います。
ここではZENKAIRACING新商品紹介レビューとしてMOZA R3の特徴や使用感をまとめ、皆様のSIM環境構築の参考にして頂ければと思います。
■最も手軽なダイレクトドライブ式モーター
『MOZA R3』はモーター単品での販売は行っておらず、R3モーターベース、ESXステアリングホイール、SR-P Lite 2ペダル、専用テーブルクランプの4点がセットになったバンドルセットでの販売となっております。
そのため、このセットを購入するだけでレーシングシミュレーターに必要な基本的な機材は揃うようになっています。
まず目を引くのは、MOZA R3モーターベース本体のコンパクトさ!
3.9N・mを発生させるダイレクトモーター式ながら、モーター本体の全長は僅か7.5mmに収まっていて、これはMOZA R5と比較してもさらにコンパクトなサイズとなっています。
エンコーダー解像度は15ビットと、R5・R9と同等のスペックを持ち合わせています。
モーターを固定するために必要な底面のナットは4か所で、左右幅が78.4mm幅とFANATEC製品と共通の幅になっています。
前後幅はコンパクトさ故40mmと、特殊なサイズになっている点は注意が必要です。
付属されるESXステアリングはMOZA R5バンドルにセットされるESステアリングとは異なり、家庭用ゲーム機『XboxOne, X/S』に対応した専用品となっています。
厳密に言いますと、Xboxに対応しているのはこのESXステアリングで、ペダル用ソケットがあるMOZA R5・R9・R12もこのESXステアリングを取り付けることによりXboxに対応します。
人工レザーとなるESステアリング(画像左)に対し、ESXステアリング(画像右)はPU素材となっているため、高級感はESステアリングに軍配が上がるかもしれません。
ペダルはMOZA R5に付属されるものと同じSR-P Lite 2ペダルです。
ロードセルではなく、角度センサーによる信号を読み取るタイプですが、ヒールレストへの取り付け位置でアクセル/ブレーキペダルの幅を自由に調整できる他、ヒールレストを使用せずペダルのみをコックピットに取り付けることも可能で、好みのポジションに合わせるための自由度は高いです。
専用のクラッチペダル・ブレーキペダル用パフォーマンスキットを使用することで、アップグレードにも対応するペダルです。
※注意 「SRPペダル」用のクラッチ・アクセサリーキットは、こちらのSR-P Liteペダルに使用することはできません。
これらデバイスが揃ったバンドルセットで、ZENKAIRACING ECサイトでの価格は¥62,900(2024年7月現在価格)となっております。
同価格帯でステアリング・ペダルも付いた競合デバイスとしては『Logicool G923(2024年7月現在参考価格:¥50,980)』や、『Thrustmaster T300 RS GT Edition(2024年7月現在参考価格:¥56,589)』が挙げられますが、これらはモーターがベルトドライブ式となっており、MOZA R3はダイレクトドライブ式でこの価格帯に抑えているところが最大の魅力と言えるでしょう。
対しネックとなるのは、やはりグランツーリスモ7を始めとしたPlaystation5専用ソフトに非対応という所でしょうか。
また、同じくバンドルセットでエントリーモデルのダイレクトドライブ式で比較すると、『FANATEC GT DD Pro 5Nm(2024年7月現在参考価格:¥112,000)』や、同じくMOZAの『MOZA R5 Bundle Set(2024年7月現在価格:¥73,900)』が候補に挙がりますが、それらより低いMOZA R3の3.9Nmというトルクがどのように影響を及ぼすのかが、皆様の気になるところかと思います。
■他のMOZA製品同様のPithouse制御
MOZA R3は他のMOZA製品同様、専用ソフトウェア『MOZA Pithouse』で制御します。
最も廉価盤となるR3であっても、他のソフトと同じ項目でセッティングが可能な点は評価ポイントかと思います。
特にモーターベースのBasic Settingsでは、プリセットモデルとして『Drift』『Foemula 1』『GT』『Karting』『Performance』『Rally』が用意されており、その中でもAC(AssettoCorsa)やiRacingといったソフトごとのオフィシャル推奨セットアップが用意されているのも分かりやすく、ダイレクトドライブハンコン入門機としてお勧めできます。
バンドル付属のSR-P Liteペダルはロードセルではないものの、Pithouseではペダル入力の波形を変更可能なので、角度センサーによる踏み代の大きいペダルに違和感がある方でも、セッティングである程度のフィーリング改善は行える仕様となっています。
■ドリフトユースでも不満の無いステアレスポンス!
今回はライトユースを想定し、机にクランプ止めした状態でのプレイでZENKAIRACINGスタッフによる試乗の様子をお届けいたします。
まずはAssettoCorsa/筑波サーキットを使用した、ドリフト走行の模様をどうぞ。
MOZA Pithouseでのセットは『Drift Official』を使用しています。
ドリフトでのMOZA R3の使用感は、ZENKAIRACINGスタッフも驚きのフィーリングでした。
3.9Nmというトルクでも、フィードバックの貧弱さは感じられず、ドリフトに必要なセルフステアの早さやステア入力からのレスポンスなども申し分なく、簡易的なクランプ止め・ノートPCという環境でも、それなりにドリフトが決まってしまいます。
これには小径で軽量なESXステアリングもおそらく一役買っており、対応はしているもののRSステアリングなどはステアリング自体に重量があるので、もう少しトルク面での不満を感じることもありそうですが、ESXステアリングのままや、ZENKAIRACINGオリジナルディープコーンステアリングなどボタンボックスを持たない軽量ステアリングであれば、ドリフトユースでの不満は感じられないかと思われます。
本体がかなりコンパクト故に熱問題の心配がありますが、1時間程の走行では多少熱は持つものの、それによるタレや熱暴走などの症状は全くありませんでした。
続いてiRacing/富士スピードウェイ/SF23でのグリップユースでのプレイの様子をどうぞ。
MOZA Pithouseでのセットは『Performance iRacing Official』を使用しています。
ここでは共通クイックリリースによりそのまま使用可能なMOZA FSRフォーミュラホイールを使用し走行しています。
元々ソフトからの情報量が多いとされているiRacingですが、多少フィードバックの弱さは感じられるものの、路面のギャップを拾った時の感覚やタイヤの滑り出しなどの情報量はMOZA R9辺りと大きくは変わらない印象で、ダイレクトドライブ式であることを感じさせてくれます。
今回テストしたような折り畳みの簡易机+クランプ止めではさすがに強度不足であり、R3といえどもそれなりのFFBを発生していることを証明しています。
■総評:エントリーモデルながら拡張性があり、長く使えるモデル
MOZA R3は基本的な構成として他モデルのMOZAモーターベースを踏襲しており、例えばクイックリリースは共通でMOZA製の様々なステアリングに対応し、実車のステアリングもMOZAクイックリリースを使用すれば装着可能。
サイドブレーキやシフター用のソケットも本体裏に備わっており、購入しポン付けでHBPハンドブレーキやHGPシフターを追加することができます。
先に書いたように付属のSR-P Lite 2ペダルは、追加のクラッチペダルやブレーキ用パフォーマンスキットが用意され、ロードセルペダルにステップアップをしたくなればSRPペダルやCRPペダルに替えるという選択肢もあります。
周囲の機器の追加・交換をご提案できるほど、MOZA R3の出力は通常の使用では申し分ないと感じます。
特にゲーミングデスクにモーターをクランプ止めする環境のライトユーザーや、簡易的な折り畳み式のフレームを使用されている方が、アセットコルサでのドリフトやちょっとしたフリーランで楽しむという使い方をされる場合、軽量・コンパクトなサイズも相まって非常にお勧めできます。
Playstation5非対応というハードルはありますが、これからアセットコルサやiRacing、rFacter2といったPCレースシムを主軸にしたレーシングシミュレーター環境構築をお考えの方には、アップグレードしていくことで長く使用できるという点からもMOZA R3はお勧めできる一品です。
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