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【コラム第3回】モーションシミュレーターの誕生秘話とシミュレーターのこれから/ZENKAIRACINGシミュレーターコラム

2020.08.22 23:55(1か月前) SIM

“レーシングシミュレーター”と聞いて、どういったものを想像するだろうか。実車とは違うモノ、所詮ゲームの延長線上だと考える人も少なくないだろう。

しかし、F1チームやプロのレーシングドライバーが実際にトレーニングで使用したり、シミュレーターでトレーニングを積んだドライバーが実戦で好成績を上げるなど、いまやその重要度は飛躍的に増していることも事実だ。

そんなレーシングシミュレーターについて、ZENKAIRACINGはどう考えているのか、そもそもシミュレーターとはなにか、ZENKAIRACINGのモーションシムの誕生秘話などを、全3回にわたって紹介していく。

第3回では、ZENKAIRACINGシミュレーターの誕生秘話、そして今後どのような進化を遂げるのかを紹介していく。

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■“フニャフニャ”な出会い

 

2015年某日、仕事に明け暮れていたZENKAIRACINGの林氏。

好きなクルマを運転できていないなか、自分の好きなことに「少しばかり投資を!」と思い立ち、レースシミュレーターを作ることにした。

まずはベルトドライブのステアリングコントローラーを用意し、市販のプレイシートに設置。PS3を3台接続し3画面化した初のシミュレーターがここに完成するのだ。

しかし、シートの剛性は低く、ステアリングは変に振られてしまうという代物。

「実車とかけ離れている」

自作の初シミュレーターに違和感を抱いた林氏。次はいくつかのレースシミュレーターショップに足を運び、実際に体験してみることに。

当時、日本国内には工業用ダンパーを用いたモーションシミュレーターがいくつか存在し、それを利用したシミュレーターショップが点在していた。

そこでモーションダンパーつきのシミュレーターを体感した林氏が感じたのは、

「剛性がなくてフニャフニャじゃないか!」

それが本格レースシミュレーターとの出会いであった。

 

■“怖い”と思えるシミュレーターづくり

 

そこから3年ほど、趣味の延長線上として試行錯誤をしながらシミュレーターを作り続ける。そんななか転機が訪れる。

2018年、初めてシミュレーターを購入したいというお客様が現れたのだ。

とはいえ趣味の延長線、ほぼ原価で販売するが、そこから火がついてしまう。

「趣味だからこそ極めてみよう」

そう思い立ち、なんと実際にフォーミュラカーを購入、そして実戦デビューを果たすのだ。

実車に乗ってみて初めてわかるホンモノの動き、ホンモノの硬さ、怖さ。昨今のシミュレーターに足りないものがそこにはあった。

この足りないものこそ、シミュレーターには絶対に必要不可欠なモノだろう。

そこからシミュレーター開発は加速していく。

シミュレーターの高剛性化をはかるため、アルミフレームで筐体を自作。シート、ステアリング、ペダルの固定方法などを模索していった。

そうしてシミュレーターの開発は次なる段階へとステップアップする。

 

■動きすぎるモーションシミュレーター

 

高い剛性を得たシミュレーター、次なる挑戦は“モーションシミュレーター”だ。

まず、2本のダンパーを筐体の基礎に固定、シミュレーター内の車両の動きをドライバーが座るシートに反映していく。

理想的なダンパーの動きを模索していくなかで、ひとつのことに気づく。

「昨今のシミュレーターは、シリンダーが動きすぎている」

クルマが発生させるGを事細かに表現しようとするあまり、ダンパーが動きすぎている。そのおかげでストロークが伸び動きが遅く、無駄な動きが多くなってしまっているのだ。

無駄な動きを抑え、なおかつクルマの動きをリアルに再現する。この無理難題をクリアするのに不可欠だったのが、実車での経験だった。

制御系のソフトを見直し、味付けを最適化していった結果、動きすぎずにクルマの動きを的確にドライバーへと伝えるモーションが実現。こうして、“バージョン0.0”の2軸シミュレーターが完成した。

2軸のモーションシミュレーターはあくまで“バージョン0.0”だ

■次なるモーションシミュレーター、そしてその先にあるもの

 

2軸のモーションシミュレーターが完成したいま、その先に待っているのは4軸のシミュレーターだろう。

今日出回っているシミュレーターは7軸や8軸とシリンダーの数を増やし、上下動のみならず横方向の動きもダンパーを用いて再現しようとするものが多い。

そのなかにおいて、なぜ4軸なのか。

その答えは横方向(Yaw方向)のダンパーにつきまとう欠点に由来する。

横方向にダンパーが動くと、シートが斜めを向く。その動きでリヤが流れたと錯覚させるのが横方向のダンパーの役割である。

しかしながら、そのようなシミュレーターはしばしば、シートが斜めを向いてしまい、ドライビングポジションが変わってしまうのだ。

また、横方向の動き、リヤが流れる動きはステアリングのフィードバックから感じ取ることができる。

だからこそ、横方向のダンパーは現時点では不要だと考えます。

4軸シミュレーターこそ基礎であり、現在の2軸シミュレーターはあくまでバージョン0.0のβ版。4軸シミュレーターこそ“バージョン1.0”であり、これがすべての基礎となるだろう。

そしてバージョン1.0の先には、VR(バーチャルリアリティ)との融合が待っている。

今日のシミュレーターで主力の3画面とは違い、VRの没入感は桁違いといえる。

VRの“実際にその場にいるような感覚”と、モーションシミュレーターの“実際のクルマの動き”が合わされば、そこに究極のシミュレーターが完成するだろう。

VRとモーションシミュレーターの組み合わせは“究極”といえる

■究極のシミュレーターとその可能性

 

これまで、シミュレーターはドライバーに錯覚を起こさせ、疑似体験をさせるものだという話をしてきた。しかし、ZENKAIRACINGの考えるシミュレーターの活用方法はそれだけではない。

クルマを限界下で操縦している状況で、人間の身体はどのような働きをしているのか、そのようなメンタルなのか。そんな実験に活用していくことを目指している。

実車ではできないようなトレーニング方法を編みだし、今までになかったシミュレーターの活用方法を見出していくことができるだろう。

レーシングドライバーを育てるために生まれたレーシングシミュレーターは、もはやゲームの領域を超え、さらなる深みへと進んでいく。